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人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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視点:


【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド

君の趣味の調度品。
居心地よく調節された空調。
片付いてはいるが生活感のある部屋。
男はここが好きだった。
そういえば君は、彼の部屋に足を運んだことがない。


従順に口を開けて待つ君はやはり餌を待つ小鳥のようで、
そこに唇を合わせた男は親鳥のようにも見えただろうか。
君はこの男のキスをよく知っている。
この舌がどうやって君を求めて、どうやって暴いていくかを知っている。
腰を下ろしたソファは男二人が寝るには狭い。しかし身を寄せ合えば不可能ではないし、むしろその方がいい時もあるということも、よく知っている。

ほんの一瞬、熱が離れて。
君の腹の上で手が滑った。

「いい?」

返事は多分Beneいいよだろう。
(-15) rik_kr 2022/08/23(Tue) 23:24:16

【秘】 愚者 フィオレロ → 家族愛 サルヴァトーレ

島の中の花屋を巡る。
これは男がまだ生前の話。

男は"あえて"ノッテの領土ではなく、島にある花屋を美術館でも除くように見て回るのが好きだった。

例えそれがアルバの息がかかった場所ででも、だ。
己が見極められる程度はさすがに遠慮するも、
そうでないなら知らなかったと答える気しかない。


どんな花屋でも、全ての花を仕入れられはしない。
だからこそ巡っている最中──
好きな花を見かけると、思わず声を掛けずにはいられなかった。

「──オキシペタルム」

花屋の前の貴方が持つ花に思わず声が漏れてしまい。
おっと、と気づいてからは誤魔化すようにはにかんでから、

「いや、失礼。随分と好みが似ていたもので。
 結婚式かお祝い事ですか?」

なんて、世間話とばかりに臆さずに話題を振ってきた。
(-29) poru 2022/08/24(Wed) 3:25:35

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 愚者 フィオレロ

祭りの少し外れ、閑静な街路で男は花を見ていた。
ここ数日、島の全体が文字通りお祭り騒ぎの雰囲気に包まれている。酷く活気に満ちて陽気なそれを嫌いではなかったが、浮き立ちすぎた空気は男の日課には不似合いだった。

花を選ぶ。菓子を選ぶ。装飾品を選ぶ。
愛する者たちに贈る様々を手に取る。それを手にした、口にした、身につけた彼ら彼女らの顔を思い浮かべる。笑う声を耳に思い出し、ぴったりのものがあればそれと決める。
心に寄り添うように、言葉を交わすように、なるべく雑音がないのがいい。
だから男はそこにいた。青のオキシペタルム​────ブルースター​────をその手に持って。
声をかけられれば緩慢にそちらを見、それから柔和に笑うだろう。

「Ciao.」

もう一度青い花に目をやる。

「そうなんだ。知り合いに子どもが生まれたもので」
(-33) rik_kr 2022/08/24(Wed) 10:06:46

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ

たかが二年。数字にすればそれだけ。それでも少年期の一年は長く、ひとつの季節、ひとつの月でさえ濃密な時を孕む。
幼少期から少年期を経て青年になり、それから大人へとなる道程。変貌の時期を共に過ごしている。
傷だらけでみすぼらしかった捨て猫は、多少痩せ型ではあれど毛並みよく、涼やかに二本の脚で立って歩くまでになっていた。
だからだろうか。
君が呼んだ名を、男は訂正させようとしなかった。
戯れる愛称ニック・ネームではなく「サルヴァトーレ」と言うのを、嗜めようとしなかった。
真っ直ぐに名前を呼ぶその姿に、いつかたどり着くであろう大人の姿を見たからかもしれない。或いは小さな舌がはきはきと音を出すのを、その音が整然と並んで自分の名を作るのを、聞いていたかったのかもしれなかった。

「僕はちゃんと、三食の食事をするよ」

心配いらない、と。
ウインナーを齧って顔を少し顰めた。

「これ、思ったより辛いんだよね」
(-35) rik_kr 2022/08/24(Wed) 11:37:55

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ

少年が他者の名を呼ぶことは少ない。
客の名前なんかいちいち知りやしないし、それよりもずっと近しいあなたの名前さえ、碌に口にしやしない。
そういう習慣がついていないことがひとつ。
呼べば振り返らせてしまうと知ったことが、もうひとつ。
――それでも今、確かにあなたを呼んだ。

「メシだけじゃなくて」
「ヒトのことばっかじゃなくて、自分のことも愛してさ」
「ヒトからちゃんと愛されろって言ってんの」

あんたはそうできる場所にいるだろ――と。
呆れたような声音は、暗にそう告げている。
あなたのことをよく知りもしないくせ、子供らしい無責任さで。無鉄砲さで。
ウインナーをかじる。翠の視線があなたをちらと見上げる。

「……やっぱこっちと換える?」
(-36) beni 2022/08/24(Wed) 13:26:46

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

進んで誰かの部屋に行くような性分でもない。
元々気が向かなければ、一人でいる時間の方が多い。
貴方の部屋へ行った事が無い事には気付いているけれど、
きっとだからと言って覗いてやろうという事も無かったのだろう。

ぬるい温度。
求めれれば応えたし、暴かれるのならそのままに。
アベラルドの方からこういう事を進んでする事は少ない。
殆どがきっと貴方からで、そしてやっぱり拒まないのだ。
こういう風に。今までみたいに。
そして、今も。

最初はその許容全てが、『嫌ではない』という
消極的で受動的な理由だったかもしれない。
でも、今は貴方の事を受け入れたいからで、甘やかしたいからで、
二人の距離が無くなるこの時間が、無自覚に気に入っていたのだろう。
自覚したところで、そうだと認めることも無いのだろうけど。


「……ああ」
「いいよ。サヴィ」

「好きにしろ」

返事は貴方の予想通りに。断る理由も無かったから。
これからきっと貴方に触れられなくなるのだから。

貴方の熱を覚えるように、この夜を過ごすのだろう。
最後に。

(-37) susuya 2022/08/24(Wed) 14:00:10

【秘】 愚者 フィオレロ → 家族愛 サルヴァトーレ

Ciao、とあいさつ代わりに返答しながら、

「そりゃぁ、おめでたい。
"家族"が増えると言うのは喜ばしいですね。

私は家族に憧れてそう短いですが、
知り合いの子に花を授けるくらい愛されているのは羨ましい。
 
 そんな人なら、その花を選んだ理由が何か他にも?」

小さくどこか儚げな美しさのそれを綺麗だけで選ぶのも
何一つおかしな事ではないけれど、この伊達男めいて見える
彼なら他に考えでもあるのかと興味をつい抱いてしまう。
(-38) poru 2022/08/24(Wed) 14:02:54

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

* * *
 * * *

それから。
あの日から二日後の朝にでも、
貴方のスマートフォンにメッセージが来るのだろう。

時間の指定と、場所と。
『よろしく』とだけ添えられた、簡素で短いメッセージが。


貴方があの夜のように、これまで通りに彼の願いを聞き届けるのなら、
アベラルドは夜、約束の場所で待っている。
(-39) susuya 2022/08/24(Wed) 14:03:27

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド

「ふふ、​─────うん」
「愛してるよ、ドニ」

蕩けるように、
甘く、
囁いて。
夜を溶かすのだ。二人は。





メッセージにはすぐに返事があるだろう。『了解』とこちらも一言。その後に普段通りの天気や食事に関する話題がぽつぽつと寄越される。少なくとも文字の上では、男の振る舞いはいつも通りに見えた。

それからアジトでの報告を聞き、各々自分のすべきことを行う。
そこでもやっぱり男はいつも通りににこにこと皆の顔を見て回っていて、なんの代わりも動揺も見せない。
その平静さを君が疑うことはないのだろう。


そして、夜。
男は約束通り君のもとへと現れる。
普段通りの靴音を鳴らして、普段通りの服を身につけて、普段通りの笑みを携えて。

「やあ、ドニ。早いね」
「わりといい夜だ。祭りもまだ、十分賑わっているようだし」

特別なところは何もない。きっとこれも日常の一場面でしかないのだろう。
(-47) rik_kr 2022/08/24(Wed) 18:13:03

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

普段通りのメッセージをこちらも普段通りに返す。
アベラルドが本当にいつも通りなのか、取り繕っているのか。
文字の上では表情も声も分からないのだから判別は付かないだろう。
けれど、恐らく、本当にいつも通りなのだ。
そして貴方もきっとそれを疑いもしない。

特に準備らしい準備はしなかった。
持っているものだって大きく変えはしない。
これからする事はきっと自分の為にしかならない事だ。
家族アルバにとっても損害だし、貴方の死を悲しむ人だって沢山いる。

それでも、アベラルドは取りやめたりはせずに。

靴音で、誰が近づいているのかは分かった。
早くもなく、遅くも無く、本当にいつも通りの音。
声を掛けられる前にそちらを見て、笑う。
こちらも、大きな変わりもなく。

「そりゃ、こっちが呼んでおいて待たせるわけにはいかないだろ」
「向こうで馬鹿みたいに騒いでる奴もいたな。
 酒も飲めない奴が浮かれて飲むからああなる」

言葉を交わしながら、手招く。この路地に続く暗がりの方へ。

「こっち」

子供ならば手でも引いたのだろうか。
アベラルドは先に背を向けてそちらの方に歩きはじめる。

(-50) susuya 2022/08/24(Wed) 18:29:38

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

それだけ、いつも通りじゃなかった。
いつもは貴方と歩調を合わせでもするはずなのだ。
だから、コレはわざと。

この数秒が今なら逃げられるという、最後の時間だ。
(-51) susuya 2022/08/24(Wed) 18:30:53

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → いつかの夢 ヴェルデ

「僕は幸福しあわせだよ、ヴェルデ」

愛されろ、という言葉にはそう返事を。
君の言葉を嫌ったのでも、否定したのでもない。事実男は満たされている様子だった。男が君を、或いは彼女を見つめる瞳に愛以外の何かが混じったことはなかったし、何か飢えた様子を見せることも、妬む目付きをすることだってなかった。
男はいつだって愛だけを与えて、与えて、与え続けた。
それしか知らないように。
それだけが呼吸のように。
だから、君の無責任な問いは、無鉄砲な言葉は。
案外、それが本質だったのかもしれない。

それでいて、見上げる君の視線を、ほら見ろとでも言いたげな顔で受け止めるのだ。

「……おや、優しいね。ヴェルデ」
「でも平気だよ。それってちょっと、かっこ悪いし……」
(-54) rik_kr 2022/08/24(Wed) 18:38:00

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 愚者 フィオレロ

「へえ。憧れて?」

君の言葉を聞いて、気になる単語を掴みあげる。それはある意味センシティブな問いだったかもしれないが、男が臆することはなかった。

「ああ、」

君に注がれていた視線が手元の花へと移動する。わざとらしく逸らしたのではなく、単純に話題のきっかけへと目が向いただけらしかった。その証拠に先程まで花屋と向き合っていた男の身体は今、開け放ち、受け入れるように既に君の方へと向いている。

「そうだね。月並みだけど」

男の口元が笑みを形作る。愛する者を思って、自然に零れたのだろうか。

「生まれた子が男の子なんだ。ベイビーブルー、男の子のラッキーカラーだよ」
「それから花言葉は幸福な愛……だっけ。ほら、この青。マドンナのヴェールの色をしているだろう」

そこで、もう一度視線をあげる。
弧を描く口元、やや眇られた瞳。いたずらっぽい笑いがそこにあった。

「……なんてね?」
「こんなこと、君も知ってるんだろ? わざわざオキシペタルムなんていうんだもの、ブルースターじゃなくてさ」
(-64) rik_kr 2022/08/24(Wed) 19:11:25

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド

男はアルバの顧問コンシリエーレだ。
ファミリーの全てに心を砕き、配り、人となりを知り、交遊する。時にはボスの友人にすらなり、その言葉を否定すらして見せる。その立場は、概して幹部より重い。
であるというのに、男はまるで中間管理職のように熱心に動き回った。その姿はただの善人、或いは各々の兄、親、友人のようにも見えたろう。その親しげな様子を煩わしく思う者も当然いたけれど、概ね好かれている様子だった。
きっとそれは、君から見ても。そして、君も。

二人の振る舞いは思慮に欠けているのかもしれない。
それでも、止めておこうだなんて言わなかった。

「祭りで羽目を外さないなんて損だからなぁ。うっかり危ないところに踏み込まなきゃいいんだけど」

君の気遣いを、
────それとも最後の畏れを、
男は受け取ったのかどうか。
機嫌が良さそうに笑っては歩みを進めた。追いつくように、その歩調を早めて横に並ぶ。
(-70) rik_kr 2022/08/24(Wed) 19:32:50

【秘】 愚者 フィオレロ → 家族愛 サルヴァトーレ

「孤児だったものですから。
 その上で幸せな"家族"を見てしまうと憧れませんか」

よくある話だろうとばかりに。もうひとつ、あなたはどうですか?を込めた笑みが貴方を見やる。

こんな花屋の店先で出す単語でも返す話題でもないにも拘らず、
気にしていないのか、あるいはそう見せているだけか。
何の躊躇もなく会話のパスを返す。

「はは、いやまあ」

最初のワードで"結婚式"を単語にも出していた時点で、元々知っていたことは明白だろう。

隠しもしない緩い笑いから、小首を傾げて貴方の目を見つめる。
貴方が変えた姿勢に無意識に敵意はないとばかりにそれとなく腕で覆っていた姿勢を、開けたものに変える。

「あなた自身にもご家族がいるように見受けましたが。さて。

 それに、好きな花家族のように愛しい についての話は幾らでも聞きたくて。
 特に品のある貴婦人ならよく見かけるんですが……情に厚そうなお兄さんが知っているのを見ると、つい尋ねたくなったんですよ」
(-71) poru 2022/08/24(Wed) 19:40:31

【秘】 天使の子供 ソニー → 家族愛 サルヴァトーレ

子供の頭にしては重たい頭蓋。肩先までしか届かないけれど、それくらいまで届いてしまう。
腕の中で愛される時代は終わり。まやかしの安寧があるだけ、夢を見ているだけ。
それにも関わらず、貴方の優しさを利用してこうして水底のように身を沈めているのだから、
顔貌に張り付いたあどけなさとは裏腹に、十分によく物を知っている大人の筈なのだ。
柱時計のように丁寧に規則的に注がれる愛に。
値するものかどうかなんて、誰にもわからない。

「ん、……今日は大丈夫。トトーの為に、空けられる。
 だからもうちょっとだけ、居られるよ」

用事はない。誰某れに命じられた用事は。自分のための用事は、捻じ曲げたって構わない。
最後にもうひとつぶんだけ、ぎゅうと胸に頭を埋めてさんざんに甘えてから。
歩きやすいように一歩離れて、二人だけの為に間借りした休憩所から出る扉に踏み出す。

その日は太陽も高いうちに二人だけの時間を過ごして、普段どおりにわかれたのだろう。
互いの人生は深く交わらない。一つのいきものになることはない。
それが本当の別れになると知っていたなら、もう少しだけでも時間を割こうとしただろうか。
いつか斜陽の日が来る。
その、少し前のことだった。
(-72) redhaguki 2022/08/24(Wed) 19:43:28

【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ

「……そ」

あなたがそう言うのなら、少年にはこれ以上、重ねられる言葉はない。
口が巧くはないのだ。
それに何より、元よりそこにないものを欠けていると認識することはむずかしい。
少年自身だって、そうなのだ。
それでも今、差し出そうとしている気持ちなにかが届いたらと。
それは、ほんのささやかな我儘だ。

「無理に食べるのもかっこよくはないだろ」
「じゃあ、ええと――おれが」
「おれがほしいから、ちょうだい」
(-74) beni 2022/08/24(Wed) 19:47:59

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「全くだ。ここら辺なんか、特に物騒なのにな」

そう言って、ついてきたのをちらりと見ては一つ浅く息を吐いた。
もう後戻りは出来ない。


暗く細い路地は当然と言うべきか、人の気配一つない。
夏の空気が湿気を伴って、建物の隙間に風となって緩やかに吹いていた。
転がっている何かの瓶を軽く足で横に蹴れば、
コンクリートの上を転がる硬質な音がした。

「ここでいいか」

何度か道を曲がって、進んで、待ち合わせた場所から奥まった位置に立ち止まる。そこだけはさっきまで歩いていた道より小奇麗で、ゴミも落ちちゃいなかった。

「もう少し綺麗な場所にしてやりたかったんだけど、そんなとここんな陰に無いもんな」

貴方に向き直して、気の抜けたように笑った。
その顔は酷く寂しがっているようにも見えるし、
酷く安心したようにも見えるだろうか。

「……傷は付けたくないんだ。銃もナイフも使わない」

ぱ、と顔の横で両手を上げる。
(-75) susuya 2022/08/24(Wed) 19:54:28

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 坑道の金糸雀 ビアンカ

「そう? ​────君が言うなら」

やっぱり、そう。
君はあの子を渡さないし、男も結局こう言うのだ。
寂しいと言うくせに、悲しいと言うくせに。
カタギにするだとかなるだとか、そういうことに関心はないらしい。


男は言葉を尽くした。女は多くを語らない。結局は、そういう戯れを楽しんで。
戯れが稀に真実を映すこともあったろう。

沈黙は金、雄弁は銀なんて言うけれど、それだけが全てでもない。
偉そうな格言は、大抵何の役にも立ちはしない。


「身に余る光栄だ、<cc dolcezza>お姫様</cc>」

最後まで止めない。
男は模範的な客ではなかった。客を待つ娼婦と話し込むことも多かったし、顔を合わせれば大抵出かけようと誘った。酷く親しげで馴れ馴れしく、いつだって恋人を呼ぶように君を呼んだ。
男は模範的な客ではなかった。それでも乱暴だけはしなかったし、君の見せる夢に溺れることもなかった。恋人を冷静に愉しみ、その手を引いて逃げようなんて言う致命的な一線を越えようとすることもなかった。

「僕も愛してるよ、ビアンカ」
それでもこれだけは、真実。


朗らかに笑って手を振り、踵を返す。
女は娼婦だった。男はマフィアだった。
それはきっと、ありふれた話だった。
(-77) rik_kr 2022/08/24(Wed) 19:59:06

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ザ・フォーホースメン マキアート

「それでもさ。子どもなんて、長いこと抱いていないから」

両の手に目をやる。大きな手をゆっくり握って、開く。
マフィアという組織に身を置いていれば、どうしたって生より死の話題が耳につく。やれ誰が死んだ、殺した、殺された、自分の組織のことではなくても、ないからこそ日常茶飯事だ。
だからこそ家族ファミリーは新しい命の誕生を喜んだ。男も例外ではなく、きっと周り以上に。
喜びをよく顔に出す男だった。
寂しさも素直に口にする男だった。

「そう? それなら信じよう。君は僕に嘘なんかつかないし」

にこりと笑んでは、その身体を軽く引き寄せて。
軽く頬に口付けて、「君は偉いね」。
それから元通りの位置に収まって、アルコールを一口。

「聞きたいことはもう一つあってさ。君の可愛い後輩のことなんだけど​────」
「どう、あの子は。先輩から見て?」
(-83) rik_kr 2022/08/24(Wed) 20:15:37