11:09:40

人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「そうだけど。あ〜あ、羨ましいこったな……」

こう言っている本人の普段の立ち振る舞いこそ呑気に見えそうなものだが。その実ずっと気を張っていることは、本人だって自覚していないかもしれなかった。
『やる気のある期待できる人間』だと思われたくない男は、いつもやる気のない振りをする。

改めて人気のない事を確認する。
夏の夜闇が重たく漂っているこの場所には、やはり、どうやら自分達しかいない。

「……お前は昔から冗談がうまいな。サヴィ」
「別に苦しませたい訳でもない。お前の綺麗な顔が歪むのを見るのもまた良いかもしれないが」

一歩、近づく。
すいと伸ばされた手が、貴方の首を指でつう、となぞる。

「そんな趣味も無い」

そのままもう片方の手で撫でるように首を包む。
貴方がいつかこの男にそうやって触れたように、優しく。
力は籠められないまま。

「……死ぬのは怖いか?」

きっと変わらない表情を浮かべているのだろう貴方に。
ふと聞いた。
(-24) 2022/08/25(Thu) 21:50:04

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

貴方が褒める度、アベラルドはそれを拒むことなく受け入れた。
誰が自分の事を評価してもそうだ。受け入れた。
その度に居心地が悪いような気がしたけれど、
それでも感謝をされるのは悪い気はしなかった。
期待があれば失望がある。失望が怖いわけではないが、
勝手にかけられた期待を裏切り勝手に失望されるのが非常に面倒臭かった。
思えばアベラルドは、貴方に失望されることを考えていなかった。
それもきっと貴方に対する信頼だったんだろう。そして、甘えの一つだ。

「そうかい。でも懲りないんだろ、お前」

軽くあしらえど貴方はまたそういう言葉をこちらに掛けるのだ。
……明日からは、こういう事ももう誰も聞けなくなる。

「……そうだよ。どうしてもだよ」
「死なない訳ないだろ。お前も、俺も、家族も、いつか死ぬ。遅かれ早かれいつか死ぬ。それが今ってだけだ」

旧知の友を手に掛けるとなれば怖気付きでもするのだろうかと思ったが、案外自分に迷いは無いらしい。
貴方の首をぐるりと包む手付きに震えはなかった。その上を走る動脈の位置を確かめるように、親指が皮膚を撫ぜた。
自分を見下ろすアメジストを見つめる。

「俺も不思議な気分だよ。……安心しろ。うまくやる。苦しいのは短くて済むようにさ。他の奴に殺されるよりきっとずっと楽だ」
「……ハハ。そうか。お前、死ぬんだな」
「俺も惜しいよ。ありがとう」

他人事のような言葉を皮切りに手に力を籠める。
壁に押し付けるようにぎゅう、と。
貴方の最期の体温を掌に感じながら。
(-63) 2022/08/27(Sat) 13:56:54

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

欲した者から与えられるのであれば、今貰い受けようとしているこの手の中の命も早い者勝ちだったのだろうか。
いや、きっとそうだ。そうだと思っているからこそ、
自分は今ここでこうしている。許されるままに。

貴方の骸が遺れば悼む者はきっと多いのだろう。
自分だって貴方の墓標があれば毎日花の一つでも添えるだろう。花屋で買う花が一本増えていた事だろうし、
この話はこれからの未来で起こり得ぬことだ。


「サヴィ」

返事は出来ないだろうに、声を掛ける。

「お前、人は死んだらどこへ行くと思う。天国でも、地獄でも、あるだろ。もしかしたら、どこにも行かないのかもしれないけど」

声音は努めて冷静でいつも通りだった。込められる力ばかりが強くなる。貴方の瞳が閉じるその時を見逃さないように、一時も目を逸らさずに。

「俺、お前と一緒に地獄に行きたいよ。お前はもしかしたら天国へ行くかもしれないけどさ」

いつ貴方が自分の声を聴きとれなくなるのかもわからないのに、世間話のように続けるのだ。

「道の途中で待っててくれよ。サヴィ」
「お前と言葉を交わせなくなるのは少し惜しいんだ。お前と話すの、嫌いじゃなかった」
「嫌いじゃなかったんだよ」

それで、いつもみたいに笑うのだ。
貴方が事切れるその時まで。
(-68) 2022/08/27(Sat) 17:01:07

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

貴方の表情の変化を、苦しげな様子を、夜さりの頃のようなその穏やかな色から雫がころりと零れ落ちるのをじっと眺めていれば、そういえば人が死ぬ様子をこんなにゆっくり見た事は無かったな、なんて頭のどこかにぼんやりと浮かんだ。
人を殺すのにこうやって首を絞めるのも初めてだった。
普段であればこんな面倒な事、しないのだから。

ただ、貴方の命を仕事のように簡単に終わらせたくないと思った。
これは仕事でもなんでもない。
ただの私情で、甘えで、エゴだ。
どれも貴方以外にはあまり見せなかったものだ。
貴方の命を大切にしたくて、こんな事をしている。
これは矛盾だ。判っているとも。


命の灯が一つ消えて暗澹とした帳が意識を覆い包むのも、
また一つの夜の訪れとも言えるのだろう。
月の明かりも碌に届かないようなこの場所でも、
この男の瞳の色は尚も明るく。

「………………、si」

伸ばされた手を最期に握ってやれないのは少し残念だった。
汚れのない貴方のその手は、頬にでも伸ばされただろうか。

Volemtieri勿論だよ、 tesoro.俺の唯一の人

そう言って、貴方の首を絞める手はそのままに。
少しだけ背伸びをして、冷たくなってしまった貴方の唇に口付けた。
僅かに残った貴方の命を啄んでいるかのようだった。
(-76) 2022/08/27(Sat) 21:15:31

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「…………」「サヴィ?」

「サヴィ」

ぐ、と手に人一人分の重みを感じる。
自分より身長が高いというのに少し吊られるようになった貴方の身体を、乾いた地面の上にゆっくりと降ろした。
壁に背を預けるように座らせている間、なんだか人形みたいになってしまったな、と思う。

脈は無かった。呼吸ももう無い。体温はとうに失われて、ひどく冷たくなっていく。名前を呼べど、午睡の後の陽だまりのような声で返事が返ってくる事も無い。
貴方の紡ぐ愛は、今から全て過去になる。
あるいは残された者に息づき続けるのか。

事切れた。死んだ。────
殺した。

間違いようもなく、今目の前で笑えて来るほど安らかに眠った彼の命は自分が奪った護った

「サヴィ、……ありがとなあ」
「痛かったよなあ。苦しかったよなあ」

……酷く優しい手つきで、貴方の髪を撫でる。
自分の髪とは違う、ゆるく癖の付いた髪を整える。
それからそのまま頬を撫でてこちらを向かせる。

──なんとなく、なぜかは分からないけれど、そこから暫く動けなくなってしまった。

殺されたってのに。こいつ、なんでこんな顔してんだ。


そう思いながらじっと、
……じっと、屈んだまま貴方の顔を眺めていた。

(-100) 2022/08/28(Sun) 20:27:01

【置】 陽炎 アベラルド

昔なら涙の一つでも流しただろうか。

妹が殺されたと知らされた時だって、死体すら見ちゃいないのにやるせなさと哀しみで馬鹿みたいに泣いた覚えがある。
だというのに。

幼なじみが目の前で息絶えたというのに、
頭はどこか冷たく冴えていて穏やかだった。
哀しみよりも、虚無感よりも、何よりも凪のような気持ちがあった。
『仕事』の後のような昂ぶりも無い。

恋愛ではなかった。性愛でもない。
いちばん近いのは友愛だとか親愛なのだろうか。
そのどちらも、またどこか違うような気がした。
ただこれは「愛」であることは変わりなく、貴方が死んだとしても潰える様子も無かった。

貴方が死んでくれて嬉しい。
貴方が自分のせいで死んでくれて嬉しい。

貴方の死に顔を眺めている間、
自分はきっと穏やかに笑えていた。

奪われなくてよかった。
(L12) 2022/08/28(Sun) 20:36:06
公開: 2022/08/28(Sun) 21:30:00

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

……ふと、「残さなければ」と思った。
貴方の一部でも、自分の手元に残したくなった。
きっと貴方の身体が見つかれば、土の下で眠る事になる。
その前に、自分の傍に居てもらわなければならないと思った。

何がいいか考える。
貴方がいつも身に着けていたタイ。アクセサリ。
自分に慈愛のまなざしを向けていたアメジストのような瞳。

思考と視線を巡らせて、それから一つ思い至った。

手がいい。
自分に触れてくれていた手がいいと思った。

頬に触れる手も、頭を撫でる手も、差し伸べられる手も、どれも好きだった。だから、それがいい。
でも全ては少しずるいような気がして、指の一つだけにしておこうとした。

そっと冷えた手を取る。自分の手よりもずっと綺麗な手。
終ぞ汚れる事は無かった。

小指にしよう、と決めた。
(-102) 2022/08/28(Sun) 20:45:55

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

折り畳み式のナイフなら、万一の際に備えていつも持ち歩いて居た。これで人を殺そうとするにはあまりにも心許なく、そういった用途で使われたことは一度も無いが、よく砥がれた刃は人の肉を裂く事なんか容易だ。

「…………ん、」

それをポケットから取り出す傍ら、ふと視界の端にネックレスが映った。最初は何かわからなかったが、すぐに貴方の持っていた物だと思い至る。どういった経緯で持ち歩いているのかは知らなかったが、手放すつもりはないらしいことは知っていた。
……今ここで持ち去っていくのはこいつに悪いと思い、触れずにおく事にする。
だから、それはそのままだ。

地面に手を広げ、関節部分にナイフを当てがう。
刃を通せば薄い肉を断つ感触がした。流石に骨までは斬る事は出来ない。だから、体重をかける必要があって。
心の中で詫びながら柄に両手を添え、思い切り体重を乗せた。
ぱきゃ、と嫌に軽い音がした。
少し勿体ないと思った。仕方のない事だ。



(-152) 2022/08/29(Mon) 19:01:26

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

手を離せば小指はすっかり手から離れている。
心臓の止まった今、流れる血の勢いも鈍いのだろうか。
アベラルドはほう、と息を吐いてそれをつまんで持ち上げて、目の高さで眺めて見せた。

……ああ、自分のやる事は終わったな、と心中独り言ちて。

清潔な藍のハンカチでそれを包んで──そういえばこれも貴方がくれたものだったか────上着のポケットに、そっと入れた。

命は貰い受けた。後は去るだけだ。
貴方のその整ったかんばせを見るのも、これで最後になるのだろう。

「……サヴィ。
またな


Sei nel mio cuoreこれでお前はずっと俺の傍に居てくれる

もう一度貴方の頭をゆったりと撫でて。
すっかり冷え切った唇に、もう一度キスをして。

A prestoじゃあな

それからは、何も言わずにこの路地を去る。
一人分の固い靴音が遠ざかっていく。
そしてここに残るのは安らかな骸と傍らのネックレスだけ。
貴方が誰かに見つかるまでの時間は、穏やかな眠りたり得るだろうか。

もはや、それは誰にもわからないのだろう。
(-154) 2022/08/29(Mon) 19:05:12
 




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