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人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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プロローグ

【人】 花瓶  

  

   想いは風となり人を導く。

   風は花弁を散らしてゆく。

  
(0) master 2022/08/08(Mon) 0:33:07



到着: ソーネチカ

【人】 ソーネチカ



  
花咲病。

  それは身体に花が咲き、最期には大きな花弁となり
  命を散らすことになる奇病。
  薬などの有効な治療法は確立されていない、
  罹った人もほぼいない、珍しい病。

 
(1) alice_sanjou 2022/08/08(Mon) 1:21:33

【人】 ソーネチカ



  
助かりたい?死にたくない?

  心を揺らしていくたびに
  またひとひらの
花弁
が落ちていきます。

  
(2) alice_sanjou 2022/08/08(Mon) 1:23:28

【人】 ソーネチカ



  だから彼女は、諦めようとしました。
  静かに、来るはずの終わりを見据えて。
  

  これはそんな彼女の、お話。
     
―――独り、花に取り憑かれた人の、お話。


 
(3) alice_sanjou 2022/08/08(Mon) 1:24:16
到着: サルコシパラ

【人】 サルコシパラ




   「命の終わりは美しいものだ。」



      そう信じてやまない男が今日も生を屠る。



(4) 西 2022/08/08(Mon) 2:02:21

【人】 サルコシパラ



男の周りは
で満ちていた。


(5) 西 2022/08/08(Mon) 2:07:33

【人】 サルコシパラ




   自分を産み落とすと同時に事切れる母
   妻に取り残された事実に絶望し首を吊る父

   空腹に泣く人を救うために喰われる家畜
   疫病によって命を落とす幼子達

   踏みつけられた花々のように
   男の周りではいつも誰かが枯れている。




(6) 西 2022/08/08(Mon) 2:10:38

【人】 サルコシパラ



   しかし男だけが死から逃れ
   死に取り込まれる人々を見せつけられる。

   それでいて、その散り際は美しくも儚く、惨く。
   男はいつも怯え、惹かれ、無情を憂いた。


(7) 西 2022/08/08(Mon) 2:12:12

【人】 サルコシパラ



    男の名はサルコシパラ。


      命の輝きに魅入られ、花を愛した
      孤独で哀れな、たった一人の人間である。



(8) 西 2022/08/08(Mon) 2:15:30

【人】 サルコシパラ



 ───朝の一幕:自宅───


     「今日もお前は可愛いね。」



   自宅の花瓶に活けられたバラを撫でると
   サルコシパラは口角を高く吊り上げる。

    W人との関係を持とうともせず、
     一心不乱に花を溺愛する青年。W


       W花と結ばれる為に生まれた男。W


   すっかり街では奇人の扱いを受け
   奇異の目で見られることも何処吹く風。
   サルコシパラの一日とは、大体そういうものだ。


(9) 西 2022/08/08(Mon) 2:18:47

【人】 サルコシパラ



   ただ以前と違うことを
   ひとつだけ挙げるとするならば。


     「おはようございます。
      今日も綺麗ですね。」


   数年前から同居を始めた者がいるということ。
   血縁も何もない。
仮面の中を見せることも滅多に無い。

   それでも身寄りのいないサルコシパラにとって
   それはたった一人の家族のようなものだった。

   
(10) 西 2022/08/08(Mon) 2:21:38

【人】 サルコシパラ



   サルコシパラに同居人が増えたと
   驚きを隠せない街の人間に
   サルコシパラは笑いながら言う。


   「そんな滅多な関係じゃないですよ。
    毎日口説いて、毎日振られてますから。」


   そう、サルコシパラと同居人…
   ウユニ
との関係とはそういうものだ。**



(11) 西 2022/08/08(Mon) 2:24:13
到着: ウユニ

【人】 ウユニ



  
「この命が終わるときは独りでいよう」


       
そう決めていたはずなのにね。


 
(12) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:50:21

【人】 ウユニ



私にとって
は縁遠いものだった。


 
(13) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:51:10

【人】 ウユニ



もっとも、それも昔の話。
  
(14) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:52:05

【人】 ウユニ



   愛情深い父母のもとに生まれ
   Wお姉ちゃんWと慕ってくれる弟妹もいた。
   私は、あの子たちに得意な裁縫で
   服や帽子を作ってあげたりして。
   そのたびに大げさなくらい喜んでくれて
   それがたまらなく、可愛いと思ってたの。


   
そこにはあたたかで幸せな家庭があった。

 
   手入れされた花壇に咲く花々のように
   私の周りには確かな幸せがあったはずだったのに。


 
(15) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:56:16

【人】 ウユニ



   そんな一つの家庭の幸せに亀裂が走った。
   原因は……身体に花を咲かせた私だったの。

   当時の私は、それが病だとは知らず。
   家族に忌避されるとも、思っていなかった。


 
(16) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:57:43

【人】 ウユニ



       家族は、味方でいてくれると。
       そう信じて疑いもしなかった。  


 
(17) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:58:11

【人】 ウユニ



   太ももに咲いた、まだそう大きくない花を
   家族に見せて、相談したあの日を
   私は今でも覚えている。

   弟妹は異物を見るような目を向けて
   理解が及ばないことへ怯えを見せていたし
   母は見たくない、理解したくないと言わんばかりに
   私から顔を背けていた。

   眉間にしわを寄せて、
   此方を見ていた父が吐き捨てた言葉も
   はっきり覚えているわ。


 
(18) alice0327 2022/08/08(Mon) 15:59:41

【人】 ウユニ



    
Wこの家から出ていきなさい。W


  
(19) alice0327 2022/08/08(Mon) 16:00:13

【人】 ウユニ



   最初は何を言われたか、わからなかったの。
   どうしてそんなことを言われるのかも。


      今ならわかる。
      家族は皆、異質な存在になった私を
      受け入れがたいと思ってしまったのだ、と。


 
(20) alice0327 2022/08/08(Mon) 16:01:10

【人】 ウユニ



   父の言葉をすぐには理解出来なかった私は
   
どうして、
とか聞いたような気がするし
   それに対する答えは、
   
見たくない、気味が悪い、

   と言ったような忌避の言葉だった。

   出て行けという父に、家族は誰も止めなかった。
   
もし、誰か一人でも止めてくれる人が居たなら

   
私はきっと縋ろうとしたと思う。


 
(21) alice0327 2022/08/08(Mon) 16:03:05

【人】 ウユニ


 
    
「…今まで、ありがとう。」



   でも、家族の態度から縋れないのだと
   悟った、
悟ってしまった
私は
   震える声で、別れを告げて。
   最低限の荷物を持って、家を出た。

 
(22) alice0327 2022/08/08(Mon) 16:04:19