12:44:33

人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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一日目

村人:1名、人狼:1名、童子龍:2名

【人】 花瓶  

 

   それでも、想い続けるのなら―――――

  
(0) 2022/08/14(Sun) 0:00:00


   幸せなひと時が終わり、夢から目覚めた夜明け。

   愛されて、少しけだるい身体を起こして、
   隣で眠る貴方の方を見ようとして―――――。

   
異変に、気付く。


   
視界が、いつもより狭い。

   恐る恐る、手で顔に触れれば、そこにあるのは
花。



              
……そんな、まさか。


  



   貴方を起こさないようにベッドから降りて、
   鞄に入れたままだった手鏡を、手探りで探して。

 

    


       
鏡で顔を映して見ると―――――。



  




左の瞳に、
が咲いていた。



  



   震える手では鏡を持っていられなくて
   カタン、と音を立てて落としてしまう。


   冷静に自分の身体を見れば、
   貴方が咲かせた花の上に
   鮮やかな花が新たに咲いたことも、
   確認できたはずだけれど
   そんなこと、今の私には出来なくて。


   病が悪化したことを悟って
   何も考えられなくなった私は
   へなへなと座り込んで、目を閉じた。

 



   涙の代わりのように、
はらり、と
花弁


        空をゆっくり舞って落ちていく。*

  

【人】 サルコシパラ



         夢を見た。


(1) 2022/08/14(Sun) 8:03:10

【人】 サルコシパラ




   緑丘の花畑
   隣には顔の見えない誰か


            ウエディングドレスを身に纏い
            手を取る美しい女性。




(2) 2022/08/14(Sun) 8:04:09

【人】 サルコシパラ




   その手を取った次の瞬間
   花嫁は薄黒い煙に姿を変えて


         自分の手を、身体を、想いさえも
         食い散らかすように飲み込んでいく。



(3) 2022/08/14(Sun) 8:04:57

【人】 サルコシパラ




   「お前達に未来はない。」




         「わたし達に未来はない」




(4) 2022/08/14(Sun) 8:05:42

【人】 サルコシパラ




   正体の分からない誰かの台詞が
   脳内で不快な程に木霊して

   ついにサルコシパラは限界を迎えると
   たまらず夢の世界から現実へ
   その意識を引きずり戻すことになった。




(5) 2022/08/14(Sun) 8:06:32


     (………いやな、夢だったな。)

   



   せっかく愛する女性と結ばれたというのに
   空気の読めない夢に朝から気が滅入るもの。

   サルコシパラが目を覚ましたのは
   悲劇の露顕からもう少しあとの話で。

   横へ振り向くとウユニの姿はもう既に
   ベッドの上にはなく。

   まだ幸福の余韻に浸っていた身体を起こして


       その光景を、目の当たりにしてしまう。

   




     「ウユニ……さん?」





   嫌な予感は当たるものとよく言う。
   噎せ返るような心臓の痛みを覚えながら
   サルコシパラはウユニの名を呼ぶ。

   一体何が起こっているのだろうか。
   ウユニの身体に咲く花が昨夜と異なっていることは
   見ればすぐに分かる。

   しかしそのきっかけとなる原因が
   まるで分からないまま。

   ふと床に落ちていた手帳を見つけて。
   何気なしにそれを手に取ると。





   そこに記されてあったのは
   いままで知ることのなかった真実だった。






     「……っ!」


   サルコシパラは驚きを隠せずに息を飲む。
   しかしそれと同時にウユニのことも心配で。

   混乱する頭をなんとか動かしながら
   座り込むウユニの元へと歩み寄り。


     「ウユニさん……
      大丈夫です。大丈夫……。」


   まるで自分に言い聞かせるように
   小さくなったその身体を抱きしめることしか
   出来ないまま、ウユニが事情を話してくれるのを
   今は待つことになるだろう。*



【人】 ウユニ



   
私に未来はない。


            
わかっていたのに。


  
(6) 2022/08/14(Sun) 13:20:38

【人】 ウユニ



   
傷つかないように、独りになろうとしたのに。


 
(7) 2022/08/14(Sun) 13:20:59


   目を閉じて、現実から目をそらしていた私は
   気配で起きたことには気づけても 
   貴方が、真実を知ったと気づかない。

 
 



   悲劇のきっかけなんてわかっている。
   貴方との幸せなひと時。
   愛しあったことで、私の心は強く揺れて。

   孤独への
になる愛情は
   身体にとっては
だったみたい。

 



   そんな悲しい現実、見たくない。知られたくない。

   見てしまえば、
   昨夜の行為が、間違いだったと、
   認めてしまいそうになるから。


   知られてしまえば、
   貴方はきっと、自分を責めてしまうから。


 



    
「いや、見ない、で……。


              
こないで……。」


  



   歩み寄られて、小さく呟くけれど
   一度手にした温もりを簡単に手放せるわけがなくて。
   抱きしめられて、拒もうとしても
   身体には力が入らない。拒めない。
   安心させようとしてくれているのかしら、
   貴方の優しい言葉に、胸が痛くなるの。


    「サルコシパラ……
     ごめんなさい、私 は……。」



   
私には未来がないの、
と。
   そう口にできずに、謝罪を繰り返して。

 

   

   暫くして、少し落ち着いた私は
   あわよくば、真実を何も言わずに
   もう大丈夫だ、と言って曖昧にしてしまおう
   なんて、酷いことを考えていたから。
   貴方から少し体を離したの。

   でも、それは出来ないと知ったなら……。
   もし、貴方が手帳を持ったままなら
   恐る恐る、こう聞いたことでしょう。

 




    
「中身を、読みましたか……?」