「……ありがとう、サルコシパラ。
　　　　　　　　　


　　　ふらつく身体を支えてもらえば>>1:D55
　　　お礼の言葉と、偽りない心を貴方に示して。

　

　　　






　

　　　貴方に連れられるままに、外へ出る…のだけれど。
　　　瞳に咲いた花はどうしても目立つ。
　　　隠さなければ、気味悪がられるのは間違いなくて。
　　　どうしようか、と視線を迷わせていると
　　　帽子を差し出されて。

　

　　　帽子を受け取れば、貴方の心遣いに嬉しくなって
　　　少しだけ、幼い子供のように笑みを浮かべた。
　　　

　

　　　帽子を目深にかぶって、
　　　貴方の視線を追いかけることもなく
　　　地面を見ていると。


　　　　「隣町に……？」


　　　貴方のいきたい場所は見当もつかなくて。
　　　貴方に連れられるままに、
　　　手をつないで歩いていく。

　

　　　

　　　暫く歩いていたけれど
　　　見られていないか、どうしても気になって
　　　周りの風景はあまり見ていなかった。

　　　たどり着いた先にあったのは
　　　店先に色々な花が飾られた、
　　　でも、花屋ではなさそうな古い店。


　　　　


　　　少し首をかしげて、
　　　貴方の方を見上げて、小さく呟いた。*

　

　　　

　　　ウユニの手を引いて
　　　太陽が沈みゆく西へと向かう。

　　　いつかくる夜明けに怯え、
　　　伸びていく影を振り切り
　　　終わりのない道を進む。

　　　太陽の光に見捨てられたくないと
　　　嘆く2つの影法師が
　　　思い出の丘のその先へと足を進め

　　　辿り着いた街で
　　　サルコシパラは未来を静かに憂いた。

　　　何かあるのかと尋ねる彼女を横目に
　　　店先に立ち、すみませんと店主に声をかけると
　　　中から初老の女性が現れる。



　　　女性は二人を見てケラケラと笑い
　　　サルコシパラはといえば
　　　女性に被せるように笑いながら

　　　と、繋いでいた手を女性に見せる。
　　　それを見た女性はといえば




　　　そう言って店の奥に一度戻ると
　　　持ってきた赤い箱をサルコシパラに手渡し
　　　サルコシパラとウユニの顔を見て微笑んでいた。

　　　そう言うサルコシパラは
　　　まるで未練を果たそうとする霊のように
　　　赤い箱を自分の懐へとしまう。


　　　　　「すみません、病気の事を調べないとと
　　　　　　いうのはわかっているんですが……

　　　　　　せっかくなのでデートでも、と。」


　　　逃れられない現実に一旦目を瞑り
　　　サルコシパラはウユニの目を見ると
　　　照れくさそうに笑ってみせた。*

　　　　　　　

　　　

　　　店の中から店主なのか、店員なのか　
　　　女性が現れて、反射的に俯いた。
　　　

　　　という言葉に
　　　何を言っていたんだろう、と思うのは自然で
　　　その答えはすぐに、貴方が教えてくれた。

　

　
　　　否定することではないけれど　
　　　流石に少し恥ずかしくもなって。
　　　白い頬に赤みが差して、仄かに色づくのを
　　　貴方が見ていたかどうか。

　

　　　女性が店の奥に戻った時に

　
　　　
　　　　　　

　　　と、小さく聞いてみたりもして。
　　　そこまでは言っていなくとも
　　　私への好意を口にしていたのかしら、なんて。
　　　もしそうなら、嬉しいような恥ずかしいような。

　

　　　　


　　　貴方の言葉に喜ぶのが、普通なのかもしれない。
　　　でも、突然のことに心が追い付かなかった。
　　　それに……箱をしまう貴方の仕草に
　　　何かを感じてしまって。


　　　
　　

　　　でも貴方の言葉が、微かな違和感を散らして。
　　　照れたように笑った気配を感じたから。
　　　つられたように
　　　くすりと小さく笑みを浮かべるの。

　

　　　

　

　✽✽✽




　
　　　折角来た隣町。
　　　確かこの街には湖があったはず。
　　　いつか貴方と行きたいと、思っていたの。



　

　　　
　　　店を後にして、手をつないで
　　　目的の場所へと歩いていく。





　　　もう戻らない、思い出の日へ
　　　想いを馳せて、空に視線を投げて。
　　　そんなことを話していれば
　　　湖までたどり着く。