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人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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ソーネチカ3票

処刑対象:ソーネチカ、結果:成功

[犠牲者リスト]
該当者なし

決着:龍人族の勝利



   嫌だと言われても行く。
   その言葉にはいともいいえともいわず
   応えたのは指先の力だけで。

   手をつなぐ彼女を導いて。

         いや、導かれて。


   たどり着いた丘は
   静かな風に揺れて
   微かに泣いているようにも見えた。





   「なつかしいですよね。

    ここで初めて貴女を見つけた時には
    本当に驚きました。

    一目惚れは幻想じゃないんだと
    知ることができたんですから。」






   過去を指先でなぞっていくと
   サルコシパラは意を決したように

   被っていた仮面を外して
   丘の上に添える。

   そうすればきっと
   サルコシパラの哀愁と慈愛に満ちた
   顔が彼女にも見えるはず。





   その言葉の真意は

   この病気と真剣に向き合ってきた
   彼女にしか伝わらない。

   たとえこの選択が
   彼女の心に傷を残すことになろうとも

   彼女の生の幕を引けるほど
   サルコシパラは大人にはなれなくて。







   1歩、また1歩。
   彼女の元へ歩を進める。


         彼女の身体を抱きしめ
         その血の中を巡る毒を飲むために。*






   指先に込められた力が私の問いへの答え。
   貴方に導かれるように丘を目指して。

        
いいえ、導いていたのは…。


   あの日もこんな静かな風が吹いていた。
   揺られた花は花弁を散らして。

       
まるで運命に泣いているみたい。


 



    「えぇ、なつかしいわ。

     突拍子もない私の提案をのむ人が
     いるなんて……、思ってもみなかったもの。

 
     
まさか、
竜胆
に一目惚れする人に

     
出会えるなんて、ね。」


 



   思い出話をしに来ただけ、
ならよかったのに。

   仮面を外した貴方の顔を見れば
   そうじゃないことくらい、わかってしまう。

   哀しそうで、それでいて……。

 

   

   きっと逆の立場なら
   私もそうしようとしたでしょう。

   今まで、貴方に病気のことを隠して
   嘘をついて、騙してきた私に
   貴方を非難する資格なんて
   本当は何処にだってないのに。

   頭では、貴方の選択も
   間違いじゃないとわかっていても
   
やめて、やめて
と心が貴方の選択を拒む。


   



   間違ってなんていないけれど
   きっと正解だってない。
   
   貴方の願いは私を悲哀へと突き落とし
   私の望みは貴方を悲哀に晒すことになる。


       どちらをとっても幸せなんてない。
              
だから、私は……。


 



   1歩、1歩と後ずさって
   貴方から距離を取ろうとして。
   何かに躓いて私は尻餅をついてしまう。


    「
貴方も
、私を裏切るの……?
     独りにしない、のは
だったの?

             そんなの、
……。


  



   貴方を見上げて吐き捨てるように呟くと。
   自分自身の都合の良さに嫌気がさして
   吐き気すら覚えてしまうの。
   貴方の気持ちを裏切って出て行こうとか
   貴方に嘘を散々ついていた私が、
   今更何を言うのか、と。


   立ち上がることも出来ないまま
   貴方の瞳を見つめて。
  
 



   「貴方がしようとしていることは
    私の救いになんてならない。

    そんな形で助かっても…
    生きていても、意味なんてないわ……。

    貴方が傍にいない時間を
    独りで過ごすことなんて、耐えられない。

          寂しさを受け入れるなんて
             私には出来ない……。」


 



   病気を引き受ければ
   当然、引き受けた人は助からない。
   貴方がそれを選ぶことは、
   私が残されることと同じで。


   はらはら、ひらひらと。
   
花弁
が風に乗って空へとのぼっていく。

 



   涙で滲む視界の中、
   口にしたのは、決意であり、脅し文句だった。

   貴方の気持ちは尊重したい。
   でも、それだけは。
   犠牲だけは、受け入れられなかったから。*


  

村の更新日が延長されました。

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   手折られた花は
   平野に放たれる未来を拒む。

   一度折れた根が繋がることはなく
   それでも花の未来を繋ぐために
   自分に何が出来るのか。

   サルコシパラの答えは不幸なのか。

   いや、初めから、幸せに溢れた道など


               なかったはずだ。





   「いいえ。僕は貴女に救われました。
    貴女が気づいていなかったとしても

         貴女がいたことで……僕は……。」







   望んでいない。
   救いになんてならない。

   怯えたように後ずさるウユニの望みは
   サルコシパラとは真逆のもの。

   こちらを非難する言葉は
   サルコシパラの心を深く抉り
   それでいて、男にとっては愛すべき
   あまりに無力な正論であった。







     「えぇ、貴女の言う通りです。

         でも僕らが反対の立場なら
         きっと貴女も、こうするでしょう?」








   「僕も貴女も変わらない

      愛した人を守りたいと願う
      無知で無力、自分勝手な、人間だ。」







   サルコシパラは歩み寄り
   怯える彼女の前で膝をつくと
   彼女の手を取る。
   最終防衛となるべき脅しに
   寂しげに笑って。



     「貴女は……僕の生きる意志だ。
      大丈夫…僕はいつでも貴女の傍にいる。」



   ポケットから取り出した箱の中から
   ウユニの薬指のサイズにぴったりの
   指輪を取り出すと取った指先にはめて。






   サルコシパラは願いに反するように
   彼女の身体を抱きとめて。


         その左目の花へと、噛み付いた。*






   貴方を傷つけてでも
   貴方がしていることを止めようと思ったのに。
   貴方を傷つけるような言葉を選んだのは
   そのため、だったのに。


 



   貴方の問いかけには何も返せず。
   黙しているのは肯定と同じだった。
   そう、私達がしようとしているのは同じことで。

   私達は変わらない。
   愛した人を守りたいと願って
   でも、相手を傷つけずに守る術を知らないの。
   
   たとえ傷つけてでも、自分の望みが叶うのなら
   そうしようとする、自分勝手な、人間。


       
そんな自分がたまらなく嫌いなのに。