>>33


徽子はあやかし。私もまた。
もう取り繕う必要なぞ、欠片も無かった。

百継邸から離れたところでと、しかし寺は寺であの香の匂いが厄介だ。

場を選び慎重に香の煙が届かない塀際に立つ私に、か弱きことと徽子は余裕げに嗤う。

「────何の為かと、聞くのも野暮だが」



「お前は、何も思わぬのか。感じないのか？」

長年、百継様の傍に居て。
あの方の成長と苦悩と悲願を目の当たりにし続けて、それでも何も思わないのか。



徽子からすれば、私の側こそ滑稽に見えるだろう。

人の姿となり、人と混じり、都をあやかしの被害から守るために奔走している私の側こそ。